EPA看護師候補者教育 ~看護師候補者とともに~

個別学習

 ~状況設定問題~

  次の文を読み【問1】~【問3】の問いに答えよ

 Aさん(68歳 女性)は、70歳の夫と2人で暮らしている。6年前にパーキンソン病と診断された。現在、レボドパを1日3回内服している。ヤールの重症度分類ステージⅢで要介護1である。夫が付き添い、神経難病専門クリニックに杖を使って通院している。特定医療費(指定難病)受給者証を持っているが、在宅におけるサービスは利用していない。

【問1】Aさんは足がすくんで転びやすくなったため受診したところ、レボドパの処方が増量になった。Aさんは「主治医から薬を1日4回飲むことになると説明を受けました今までは何もなかったけど、薬の副作用にはどんなものがありますか」と外来看護師に相談した。

 副作用の説明で正しいのはどれか

  1.「軟調になることがあります」

  2.「体が勝手に動くことがあります」

  3.「低血糖を起こすことがあります」

  4.「呼吸が苦しくなることがあります」

解説

 1.3.4.×  2.

 選択肢1.3.4.はレボドパの副作用で起こる症状ではありません。レボドパの長期投与により副作用の一つに不随運動(ジスキネジア)があります。

 パーキンソン病安静時振戦無動筋強剛(固縮)姿勢反射障害を主症状とする神経難病の一つです。ステージⅢは活動がある程度制限されるものの自立した生活が可能な状態です。可能な限りADLの維持に努め、転倒予防のアセスメントを行い、必要な在宅サービスの導入を支援することが大切です。

候補者はレボドパの副作用は全く分からなく選択肢3を選んでいました。課題を出し、レボドパの副作用を学習するよう話しました。

 

【問2】3か月後、Aさんは入浴中に夫が見ている前で転倒したが、外傷はなかった。その話を聞いた主治医から、安全な入浴ができるように、訪問看護師に依頼があった。訪問看護師が、訪問時にアセスメントする項目で最も優先するのはどれか。

  1.浴室の室温

  2.ADLの日内変動

  3.夫の入浴介助の様子

  4.居室から浴室までの距離

解説

 1.× 浴室の室温を調整することは必要だが、転倒と直接の関係はない

 2.〇 レボドパを長期間服用するとwearing off現象やon-off現象などがみられる。ADLの日内変動をアセスメントすることは重要である

 3.× 適切な介助方法を提案するためには必要ですが、転倒予防に関するアセスメントとして最も優先する項目ではない

 4.× 入浴中の転倒であるため、居室から浴室までの距離は関係ないです

候補者は選択肢2を選び正解しました。安全な入浴をするためにを考えると簡単ですと話してきました。わからない意味の日本語もなかったそうです。

*レボドパの効果が発現してパーキンソン症状がコントロールされている状態をon、効果がなくなった状態をoffと表現します。パーキンソン病の進行とともにon時間が短くなり、offを自覚するようになってきます。1日のうちにonとoffが混在する状態をwearing off現象といいます。

 

【問3】Aさんは「家事は夫がしてくれて感謝しています。介護支援専門員とも相談しながら、自宅で暮らしていきたいと思っています」と訪問看護師に話した。Aさんへの提案で最も適切なのはどれか

  1.訪問介護の利用

  2.短期入所の利用

  3.車いすでの室内移動

  4.訪問リハビリテーションの利用

解説

 1.× 夫が家事を担っていて訪問介護は今は必要ないです。今後、病状が進行し夫の介護負担が多くなれば提案する必要があります。

 2.× 今後、病状が進行し夫の介護負担が多くなれば短期入所の利用を提案するが今の時点では必要ではないです。

 3.× 転倒予防のために手すりの設置などは必要ですが、車いすで室内移動するほどの状態ではありません。

 4. 転倒予防とADL低下の予防の点から訪問リハビリテーションの利用は有効であるため、提案は適切です

候補者は正解でした 

レボドパの副作用は、ジスキネジアの他に、悪心、起立性低血圧、幻覚、妄想などがあります。長期服用に伴い薬効持続時間が短縮し、症状に日内変動が起こるwearing off現象や、急激に症状がよくなったり悪くなったりするon-off現象などがあります。

生理機能が低下している高齢者に、エルドパを投与する際は、不安、不眠、幻覚、血圧低下などの副作用に注意しなければなりません。

 

ホーエン・ヤールの重症度分類

 第1段階:発病初期、症状が一側のみに出ている状態

 第2段階:症状は両側へと広がっているが、まだ会社勤めや社会生活において自立している状態

 第3段階:さらに進行して、著明な歩行障害があり、転倒しやすくなる等、自立した社会生活が困難となる状態

 第4段階:自力での歩行が困難となり、日常生活に介助が必要となる状態

 第5段階:まったく歩行不可能となり、車いすか寝たきりの状態となる

 

パーキンソン病の症状や薬の副作用、在宅での利用者が困っているときの対応の基本は学習しておきましょう。

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。