EPA看護師候補者教育 ~看護師候補者とともに~
~個別学習~ 状況設定問題(循環器)
Aさん(54歳 男性)は、10年前に心筋梗塞を発症し、2年前に慢性心不全と診断され外来受診を続けてきた。1週間前からトイレ歩行時に息苦しさがあり、4日前から夜に咳と痰とがみられ眠れなくなっていた。本日、Aさんは定期受診のため来院し、心不全の増悪と診断され入院した。入院時、体温36.3℃、呼吸数24/分、脈拍数96/分、整で血圧124/72mmHgであった。心エコー検査で左室の駆出率28%であった。体重は1週間で4kg増加し下肢の浮腫がみられる。
【問1】このときのAさんのアセスメントで適切なのはどれか
1.ショック状態の可能性が高い
2.左心不全の症状はみられない
3.NYHA心機能分類のⅠ度に該当する
4.浮腫は右心不全の状態によると考えられる
正答
1.✖ ショックとは、生体に対する侵襲や侵襲に対する生体反応の結果、臓器への血流が維持できなくなり、生命の危機に至った急性の症候群である。収縮期血圧は90mmHg以下で、頻脈、顔面蒼白、冷汗などを伴う。
2.✖ 「1時間前からトイレ歩行時に息苦しさ」「4日前から夜に咳と痰」は左心不全の症状である。左心不全では左心室に障害や負荷が加わり、低心拍出量や肺静脈圧の上昇を引き起こす。症状には、発作性夜間呼吸困難、起坐呼吸、咳嗽などがある。
3.✖ 心不全の機能分類(NYHA分類)のⅠ度は、心疾患を有する症状がないものである。本事例は「1週間前からトイレ歩行時に息苦しさ、4日前から夜に咳と痰」という症状があるため、NYHA分類はⅡ度またはⅢ度である。
4.〇 下肢の浮腫は右心不全の症状のひとつである。右心不全では右心への負荷により静脈圧が上昇する。症状には浮腫、体重増加、乏尿、腹部膨満感、食欲不振、うっ血肝、消化管浮腫などがある。
EPA看護師候補者は正解しました。心不全の問題は一般問題や状況設定問題でも頻出問題になっています。心不全の病態を理解して要点学習した結果の正解です。去年までは心不全の重症度分類(NYHA分類)を理解していませんでしたが、質問して確認すると答えられました。
【問2】Aさんの咳嗽を軽減する方法で最も適切なのはどれか
1.起座位を保つ
2.腹式呼吸を促す
3.部屋の湿度を30%に保つ
4.超音波ネブライザーを使用する
正答
1.〇 呼吸困難で起座位では、横隔膜が下がることで胸郭運動が楽になり、また、静脈還流の減少で肺うっ血が軽減することから、咳嗽が軽減する。
2.✖ 腹式呼吸により、効率よく酸素を取り入れることが期待されるが、咳嗽を軽減できるとはいえない。腹式呼吸は通常、慢性閉塞性肺疾患患者が習得すべきものであり慢性心不全の急性増悪時に腹式呼吸を行うことは困難である。
3.✖ 湿度30%は乾燥した状態であり、乾燥は咳嗽を助長する。
4.✖ 超音波ネブライザーの使用目的は、気道の加湿と薬剤の投与であり、心不全症状としての咳嗽の軽減にはつながらない。
EPA看護師候補者は正解しました。この問題は正答率の高い問題で、ここで間違ってはいけないです。
心不全の重症度分類(NYHA分類)
Ⅰ度:心疾患はあるが通常の身体活動では症状なし
Ⅱ度:普通の身体活動で疲労、呼吸困難等が出現(通常の身体活動がある程度制限される)
Ⅲ度:普通以下の身体活動で、疲労、呼吸困難等が出現(通常の身体活動が高度に制限される)
Ⅳ度:安静時にも、呼吸困難を示す(安静時でさえ、心不全症状が出現する)
最後までお付き合い、ありがとうございます。